書 評
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成25(2013)年8月5日(月曜日)通巻第3995号より 

  

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家村和幸『なぜ戦争は起きるのか』(宝島社新書) 

  戦争は人口の急増と領土が二大原因とされるが、ならば戦争を抑止するにはどうしたら良いか。戦争の歴史を研究してやまない家村氏の回答は「武士道の回復」にあるという。 

 なぜそうなのかは本書にあたっていただくとして、評者(宮崎)は本書を通読しつつ、しかも戦争について、よくぞここまで調べたものよ、と半ば感心し、半ば呆れつつ、だが、こういう本が世の中に流通するようになったという社会情勢の激変にも、興味が湧くのである。 

 さて、本書の圧巻は世界史過去500の戦争の分析である。 

これは前人未踏の作業、いや戦前に、わが大本営はおこなったかもしれないし、防衛研修所も記録があるかも知れないが、個人が取り組んだ戦争史の研究である。 

古代はペロポネソス戦争、トロイの木馬から劉邦vs楚、第二次大戦以後におきた戦争の全てを一覧している。 

2001年9月11日のNY同時テロ戦争からだけでも、イラク、ダルフール、チモール、パキスタン、ウィグルの反乱等々、22もの紛争、戦争、内乱が勃発している。知らぬは日本人ばかりなり、というわけだ。 

 とくに巻末に掲げられた世界戦争史の勝敗表は一見の価値有り。 

●=「全面戦争」、○=「局地戦争」、◎=「独立戦争」▼=「内戦」、▽=「内乱」と五つのカテゴリーに分けて過去の歴史に現れた戦争を総括している。 

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  軍事評論家=佐藤守のブログ日記(13-08-04 暑中お見舞い) 

  ≪わが兵法研究会の会長、家村氏の新著である。彼の研究心にはこれまた頭が下がる。反戦活動家が跋扈する今日、彼らに対抗する“わが方”も、戦争発生原因を追究し、起させないための努力が必要だろう。彼はその根源には「武士道がある」と断言する。世界の戦争史が詰まっている割には、平易な文体で読みやすい。通勤電車の中で気軽に読書してほしいものだ≫

2013/8/10